夏の人気のない朝。蝉が鳴き始める時間に外を歩くのが好きだったのだが
ここ数年…いやもっとかな?そんな時間に外を歩くことはない。
逆に、前の晩からの酒にどんよりとした頭で新宿の街をふらふらしていたことならあるのだけど…。
あれは小学生の頃だったか…夏の朝のまだひんやりした空気の中、近所の神社まで散歩…というよりは朝のジョギングなんぞを野球少年だったボクはやっていたのだ。神社の中は蝉たちが鳴き始め、少しうるさい。神社の社の裏側に大きな栗の木があって、そこは樹液があふれ出て、早朝のその時間に行くとカブトムシやクワガタに出くわすことがある。
神社の中は大きな木に囲まれて鬱蒼として、日が出ているにも関わらず、暗いので、誰もいないその場所に行くことは少し度胸試し的な気分でもある。ジョギングの折り返し地点。そこでカブトムシを友達にぬけがけして見つけられればラッキーってなもので、毎日、草をかき分けてビビりながら行くのである。
ある日、神社の中で、足下に大きな石を見つけた。毎日来ているのだけどそんな石を見たことがない。いや、石ではなかった。50センチほどのカメの抜け殻。甲羅と言えばいいのかしら?
そもそも水は周りにほとんどない。林の中である。カメがいるような場所ではない。しかもそれは甲羅だけである。中身はない。のぞいてみると上の方にちゃんと骨格というのか背骨の跡がある。文字通りカメの抜け殻なのである。なにを思ったのか記憶にないのだけど、ちょっといいものを発見したような気分になってそれを自宅に持ち帰ったのである。
その晩、熱が出た。高熱である。かなり苦しんでうなされていたらしい。
家の玄関の下駄箱の下にカメの抜け殻が置いてあるのに親父が気づき、これはなんだ?と聞かれたので、今朝、神社で見つけたので持って帰ってきたんだというと、親父は、そんなもの持ってくるから熱が出たんだ。神様のところに返してくる、と。
日が出ているときでも鬱蒼として薄暗い神社の中である。親父はボクからどのあたりで見つけたのか聞いて出て行ったのだけど、おそらく夜は漆黒の闇の中だということで、懐中電灯を持って行った。高熱のボーッとした頭で親父がバイクのエンジンをかける音を聞いた。
翌朝、何事もなかったかのように熱は下がり、すっきりしたものである。
親父は、なにか神様のお使いのカメだったんじゃあなかったのかな?ちゃんと拝んできたから…と言っていた。
さすがに、ボクもなんだか悪いことをしたような気分になってその神社に行って、パンパンと手を打って神様ゴメンナサイと拝んだのである。
とはいえ、ちょっと気になる。自分が見つけた場所、同時に神様に返しに行くためにボクが親父に教えた場所を見に行った。
そこにカメの抜け殻はなかった。














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